ツイスト・アンド・シャウト / アイズレー・ブラザーズ(Twist And Shout / The Isley Brothers)

ツイスト・アンド・シャウト/アイズレー・ブラザーズ(Twist And Shout/The Isley Brothers)


さあ、ベイビー
ツイストで大騒ぎだ
今だ、ベイビー
さあ、始めよう

さあ、始めよう ハニー
いい感じだね
まさに思っていた通り
君に夢中だ


ツイスト・アンド・シャウト(Twist And Shout)は、1961年に登場したR&B/R&Rクラシック。

オリジナル・レコーディングは、デトロイト出身のR&Bボーカル・デュオ、ザ・トップ・ノーツ(The Top Notes)によるドゥー・ワップ・バージョン(1961年8月リリース)。

翌年1962年には、オハイオ州シンシナティ出身のR&Bグループ、アイズレー・ブラザーズ(Isley Brothers)がリリースしたカバー・バージョン※1がチャートイン。USポップチャート17位 R&Bチャート2位を記録する大ヒットシングルとなりました。

ソングライティングは、バートランド・ラッセル・バーンズ(Bertrand Russell Berns)とフィリップ・フィル・メドレー(Philip “Phil” Medley)※2によるもの。

作者であるバート・バーンズ自らがプロデュースし※3、ティーチョ・ウィルシャー(Teacho Wiltshire)※4がアレンジを担当したアイズレー版は、ツイスト・ナンバーとしてリリースされたオリジナル・バージョンからサウンド・アレンジを一変。
キューバン・ミュージック※5を思わせる、シンプルな和声進行のループと、ゆるめなBPM(テンポ)が印象的です。


当時ボーカル・トリオであったアイズレー・ブラザーズのメンバーは

  • ロナルド・アイズレー(Ronald Isley):リード・ボーカル
  • オーケリー・アイズレー・ジュニア(O’Kelly Isley, Jr.):バッキング・ボーカル
  • ルドルフ・アイズレー(Rudolph Isley):バッキング・ボーカル


バッキングを支えるミュージシャンは

  • エリック・ゲイル(Eric Gale):ギター
  • トレード・マーティン(Trade Martin):ギター
  • コーネル・デュプリー(Cornell Dupree):ギター
  • チャック・レイニー(Chuck Rainey):ベース
  • ポール・グリフィン(Paul Griffin):ピアノ
  • キング・カーティス(King Curtis):サックス
  • ゲイリー・チェスター(Gary Chester):ドラムス

と、蒼々たる顔ぶれです。


ややゆったりとしたレイジーな演奏と、高音を極限までフィーチャーしたロナルド・アイズレーのリード・ボーカルが印象的。
ソウルフルなこぶしを抑制した、スムーズなボーカルは、ポップ・ミュージックのマーケットを意識したものでしょうか。

USポップチャート17位 R&Bチャート2位と、アイズレー・ブラザーズとしては3年ぶりのヒットであり、最初期の最大ヒットシングルとなりました。
(前ヒット曲は1959年リリースの、シャウト(Shout)ビルボード・ホット100での47位)

さらに2年後の1964年、イギリスのロックバンド、ビートルズがカバー・バージョンのシングルリリース。
このシングルはミリオン・ヒットを記録し、ツイスト・アンド・シャウトは、再び脚光を浴びることになります。


イギリスでの、アイズレー版ツイスト・アンド・シャウトのリリースは、アメリカでから1ヶ月遅れて(1962年7月)EMI傘下の、ステイトサイド(Stateside)から発売開始※6。UKチャート最高42位に。

同年8月、リンゴ・スターがバンドに正式加入したばかりの新生ビートルズは、ライブ・セットリストのレパートリーとして、ツイスト・アンド・シャウトを選んでいます。

ビートルズ版ツイスト・アンド・シャウトは、デビューアルバム、プリーズ・プリーズ・ミー(Please Please Me)に収録(1963年3月22日リリース)。

アメリカではシングル・カットされ、ヴィージェイ・レコード(Vee-Jay Records)傘下の、トリー・レコード(Tollie Records)より、1964年3月2日にリリース※7
(ビルボードHOT100で2位を、キャッシュ・ボックスでは1位を獲得)

ツイスト・アンド・シャウトはビートルズにとっての唯一のカバー・シングルによるミリオンヒットになりました。

シングルリリースから遡ること1ヶ月前の1964年2月7日。ビートルズはプロモーションのためアメリカへ初上陸。
アメリカでの初披露となる、ワシントン・コロシアムのライブでは、演奏前にポール・マッカートニーはこう紹介しています。

これから演奏する曲は、アメリカではおなじみの曲です。
(R&B)グループ、アイズレー・ブラザーズが2年前にリリースしたヒット曲、ツイスト・アンド・シャウトを披露したいと思います。



※1
アイズレー・ブラザーズ版ツイスト・アンド・シャウト

アイズレー・ブラザーズ(Isley Brothers)が、ワンド(Wand)レーベル在籍時、ライト・ナウ(Right Now)に続く2枚目のシングルとしてリリースしたカバー曲。カップリングは、スパニッシュ・ツイスト(Spanish Twist)※1A
1962年6月16日発売(4月もしくは、5月リリースという資料もあり)。

アイズレーにとっては、1959年にリリースしたシャウト(Shout)※1B以来の3年ぶりのヒット曲です(ツイスト・アンド・シャウトまで9枚ほどシングルをリリースしていますが、チャートインはしていません)。


※1A
スパニッシュ・ツイスト(Spanish Twist)

ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツ(Bill Haley & His Comets)の、スパニッシュ・ツイストとは同名異曲。

ツイスト・アンド・シャウトのカラオケに、そのままリバーブの効いたギターをオーバー・ダビングしたインストゥルメンタル曲。
副題に、The I. B. スペシャル・インストゥルメンタル(The I. B. Special Instrumental)とありますが、The I. B. とは、The Isley Brothersのことでしょう。

エリック・ゲイル(Eric Gale)のカッティングを多用したギターのソロは、粗挽きで、さぐりさぐり感満載。モンドな一曲に仕上がっています。

※1B
シャウトとツイスト・アンド・シャウト

「シャウト」の次に「ツイスト・アンド・シャウト」とは続編のようですが、偶然のシンクロ。

ツイスト・アンド・シャウトという曲はそもそもトップ・ノーツというグループに割り振られたB面曲ということから、曲が先にありきで、アイズレーが曲に「選ばれた」ということです。

シャウトという小ヒットのおかげで、「シャウトの次はツイスト・アンド・シャウトだと、プロモーション的に語呂がいい」ということで、アイズレーに白羽の矢が立ったということは、あるのかもしれません。

疾走するソウル・ミュージック「シャウト」と比較され(さらに、爆発するガレージ・ロック「ビートルズ版ツイスト・アンド・シャウト」と比較され)過小評価されがちなアイズレー版ですが、ホセイート・フェルナンデスのチャチャ※5がベースにあるBPMのゆるさが、時代的にヒップだったのでしょう。

バート・バーンズの作品群の時間軸で見ると、習作「ユード・ベター・カム・ホーム」が、「ツイスト・アンド・シャウト」で方向性が決定し、「ハング・オン・スルーピー」で開花、という流れの中の重要曲とも言えるでしょう。


※2
フィリップ・フィル・メドレー(Philip “Phil” Medley)

ソングライター/コンポーザーであり、彼が率いる、フィル・メドレーズ・オーケストラ(Phil Medley’s Orchestra)のオーケストラ・リーダー。

代表作は、ジミー・チャールズ(Jimmy Charles & The Revelletts)のデビュー曲、ア・ミリオン・トゥ・ワン(A Million to One)(1960年 ビルボード・ポップ・チャート5位、US R&Bチャート8位)。

ツイスト・アンド・シャウト成功後は、ソングライターとして、アイズレー·ブラザーズの、アイ・セイ・ラブ(I Say Love)や、ホールド・オン・ベイビー(Hold On Baby)などを、編曲者として、ベン E キングの、イッツ・オール・オーバー(It’s All Over)など、バート・バーンズとの共作を生んでいます。


※3
アトランティック・レコードの創設者の1人であり、トップ・ノーツ版ツイスト・アンド・シャウトの共同プロデューサー、ジェリー・ウェクスラー(Jerry Wexler)によると、当時新人であったバート・バーンズには発言権が無く「バートは、我々が曲に手を加えていく様子を、ゲスト用のビューイング・ルームで眺めているだけしかできなかった」と語っており、フィル・スペクターのプロデュースは最終的に失敗だったということも述べています(トップ・ノーツ版はチャートインしていない)。

当のバート・バーンズ本人もトップ・ノーツ版の出来は本意ではなかったようで(ウェクスラーは”F”で始まる言葉でdisられたらしい)、アイズレー・ブラザーズ版ではみごとリベンジを果たしています。

「私たちは、間違ったテンポと間違ったフィーリングを選択してしまった」と、ウェクスラーはスペクターとのプロデュース作業を振り返っていますが、トップ・ノーツ版もアイズレー版も、演奏はキング・カーティス(King Curtis)率いる売れっ子ミュージシャン。
特にドラムス担当は共に名ドラマー、ゲイリー・チェスター(Gary Chester)参加ということから、プロデュースひとつで、同じ曲がこうも変わるのかといういい例かもしれません。


※4
ティーチョ・ウィルシャー(Teacho Wiltshire)

アイズレー・ブラザーズ版ツイスト&シャウトには、アレンジャーとして参加。

1950年代、ルイ・ジョーダン& ヒズ・ティンパニ・ファイブ (Louis Jordan And His Tympany Five)のピアニストを経て、プリル・ビルディングを中心とする音楽出版社では、セッション・リーダーとして活躍したピアニスト/アレンジャー/コンダクター。

ツイスト&シャウトの成功後も、ザ・ドリフターズ(The Drifters)のアイヴ・ガット・サンド・イン・マイ・シューズや、アット・ザ・クラブ(At the Club)、ザ・ヴァイブレーションズ(The Vibrations)のマイガール・スルーピー(My Girl Sloopy)など、バート・バーンズとの共作が生まれています。


※5
キューバ音楽の影響

ハーレムのナイトクラブではマンボ(ダンス)漬けだったことや、1957年から1958年にかけての、カストロ前夜のキューバ旅行の経験が、その後のバート・バーンズのソング・ライティングに影響を与えたようで、キューバの国歌とも言われるスタンダード、グアンタナメラ(Guantanamera)※5Aのコード・スタイルは、繰り返しバーンズの作品に登場していきます。

※5A
グアンタナメラ(Guantanamera)

グアヒラ・グアンタナメラ(Guajira Guantanamera)とも呼ばれる、キューバ音楽のなかでも最もポピュラーな曲。

1920年代後半に、ハバナ出身のシンガー・ソングライター、ホセイート・フェルナンデス(Joseito Fernandez)が作曲したものを元に、さまざまな歌詞が載せられ、そのバリエーションだけでも、50(もしくは100)以上のグアンタナメラが存在すると言われています。


※6
ステイトサイド(Stateside)盤ツイスト・アンド・シャウト

ツイスト・アンド・シャウト/アイズレー・ブラザーズ/ステイトサイド(Twist And Shout/The Isley Brothers/Stateside)


1962年7月発売。カップリングはワンド(Wand)版と同じく、スパニッシュ・ツイスト(Spanish Twist)(UKチャート最高42位)。

ビートルズのメンバーは、イギリスでリリースされた、このステイトサイド盤を聞いたのでしょう。
ジョンはビートルズのアメリカでの成功(ツイスト&シャウトの大ヒット)後も、アイズレー・ブラザーズ・バージョンをジュークボックスにセットして愛聴していたようです。
(ジョンのポータブル・ジュークボックスには、ステイトサイドのブラック・レーベル版がセットされていたようです)。

John Lennon's Jukebox: Twist And Shout / The Isley Brothers

John Lennon's Jukebox: Twist And Shout / The Isley Brothers

John Lennon's Jukebox: Twist And Shout / The Isley Brothers

#37 Twist And Shout :

“John Lennon’s Jukebox” The South Bank Show:2004


※7
ツイスト・アンド・シャウト / ゼアズ・ア・プレイス
(The Beatles, Twist And Shout / There’s A Place)

ツイスト・アンド・シャウト/ザ・ビートルズ(Twist And Shout/The Beatles) ツイスト・アンド・シャウト/ザ・ビートルズ(Twist And Shout/The Beatles)


ビートルズのツイスト・アンド・シャウトは、アメリカではシングル・カットされ、ヴィージェイ・レコード(Vee-Jay Records)傘下の、トリー・レコード(Tollie Records)より、1964年3月2日にリリース。
カップリングは、ゼアズ・ア・プレイス(There’s A Place: McCartney–Lennon)。

ビルボードHOT100では2位を、キャッシュ・ボックスでは1位を獲得。


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