チェインズ/クッキーズ(chains/The cookies)

チェインズ/クッキーズ(chains/The cookies)


チェインズ(chains)は、ニューヨーク・ブルックリン出身のR&Bガールズグループ、クッキーズ(The cookies)の1962年11月リリースのシングル曲※1。(USポップチャート17位、R&Bチャート7位)

ベース、コード、リズムの最低限のガイドトラックから「チェインズ!」と登場するオープニングは、コーラスグループとしてのクッキーズを引き立たせるための演出でしょうか。曲のアレンジも、ループする緩めのギターストロークに、合いの手として入るホーンセクション、メンバーのハンドクラップなど、ごくごくシンプル。演奏はブリルビルディング・サウンドを支えたセッション・ミュージシャンによるもので、特にリズム担当の名ドラマー、ゲイリー・チェスター(Gary Chester)※2による3連譜を多用したビートが曲のグルーブ感を決定しています。

私の愛しいあの人は、私を鎖(くさり)で繋いでしまった
見えない「愛の鎖」に拘束されて、自由にできないの※3

と、ちょっと背伸びをした恋愛を歌うクッキーズのメンバーは、

  • ドロシー・ジョーンズ(Dorothy Jones)
  • アールジーン・マクレア(Earl-Jean McCrea)
  • マーガレット・ロス(Margaret Ross)

レコーディングスタジオでのセッションボーカルグループとしても実力派だったクッキーズだけあって、息のあった3人のコーラスが素晴らしい。ソロパートで登場するアールジーンのハスキーヴォイスも魅力的です。

ソングライティングはジェリー・ゴフィン(Gerry Goffin)とキャロル・キング(Carole King)の、おしどり(当時)チームによるもの。大ヒットソング「ロコモーション(The Loco-Motion 同じくゴフィン・キング作)」で、バックコーラスを担当したクッキーズのいよいよ「ピン」でという出世作です。

ゴフィン+キング+クッキーズ・チームの「チェインズ」の成功は、さらに次回作でグループ最大のヒット曲「ドント・セイ・ナッシング・バッド(アバウト・マイ・ベイビー)※4」へとつづきます。


※1カップリングB面は、ストレンジャー・イン・マイ・アームズ(Stranger In My Arms)。スローテンポのR&Bで、ドロシー・ジョーンズの歌唱力を楽しめる作品。こちらも、ゴフィン・キング作。打楽器のティンパニーが曲を盛り上げます。


※2
ゲイリー・チェスター(Gary Chester 1924 – 1987)
イタリア生まれ、ニューヨークのハーレム育ち。「ニューヨークのハル・ブレイン(Hal Blaine)」とも呼ばれ、1950年代から1970年代まで15000曲以上のセッションに参加。アメリカンポップスの黄金時代を支えた名ドラマーです。

クッキーズがコーラスで参加した、ニール・セダカ/悲しき慕情(Neil Sedaka/Breaking Up is Hard to Do)や、リトルエヴァ/ロコモーション(Little Eva/Locomotion)などキャッチーで切れの良い名演を数多く残しています。

アイズレー・ブラザーズのツイスト&シャウト(Isley Brothers/Twist and Shout)や、ベン・E・キングのスタンド・バイ・ミー(Ben E King/Stand By Me)もゲイリー・チェスターのドラムとは、こちらはビートルズつながり。


※3
My babyを「私の愛しいあの人」と訳してみましたが、この歌には、「かわいいあなたに教えてあげたい(I wanna tell you pretty baby)」「あなたの唇はスウィート(Your lips are sweet)」などの表現が登場。

あの人というのは「かわいくてわがままな男の子」と想像するところですが、元々この曲はエヴァリー・ブラザーズ(he Everly Brothers)のために、ゴフィン・キングが提供した曲(レコーディングはされましたがボツになっています)。女の子と男の子の立場を反転させて、「君の見えない愛のくさりに拘束されて、君を自由にできないのさ」とジョージが歌った、ビートルズの「ツンデレバージョン」が、ある意味正しいのかもしれません。(ちなみに「ぼうや」がツンデレな彼女について歌ったカバー曲第2弾はこちら


※4
ドント・セイ・ナッシング・バッド(アバウト・マイ・ベイビー)(Don’t Say Nothin’ Bad (About My Baby)。クッキーズが、ディメンション・レコード(Dimension Records)からリリースした第2弾シングル。ゴフィン・キング作。USポップチャート7位、R&Bチャート3位。

アールジーン・マクレアのボーカルをさらにフィーチャーして「彼のことを、プレイボーイだとか、怠け者とか、みんな悪口言わないで!」と、これまた茨(いばら)の道を選んだ女の子の歌。洗練されたメロディーとアレンジメント、演奏とボーカル(コーラス)の一体感など、どれもすばらしい「チェインズ」の完成系。

1963年3月リリース。B面のカップリング曲は、ソフトリー・イン・ザ・ナイト(Softly in the Night)。


ホーム > ビートルズがカバーした曲 > チェインズ/クッキーズ

スポンサーリンク
スポンサーリンク